今年最初のブログも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の話題となります。
昨年の3月下旬ごろより新型コロナウイルス感染症と思われる患者さんが当院を受診するようになり、当初は保健所に連絡をして検査を行うなどの対応を行っておりました。東京都の要請もあり、9月下旬には一般の患者さんとの動線を分け、別の場所での診察など一定の条件を満たしていることもあり、当院での発熱外来としての診療および検査を行えるようになりました。
冬の発熱は、新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザを含めた他のウイルスによる風邪症候群や細菌感染によるものなど様々です。
細菌感染であればターゲットに合った抗生物質を他の症状に対する薬と併用し、インフルエンザであれば抗インフルエンザ薬を用いた治療が可能となります。
その為、38℃以上の発熱の場合、まず採血を行うことを勧めています。それで白血球が高ければ、COVID-19の可能性は低く、抗生物質を投与し帰宅となります。もし、白血球が正常または低めという場合は、ウイルス感染も考えなければならなくなります。当然のことながら、現在はCOVID-19か否かを検査したくなるところです。患者さんに説明の上で、まず抗原検査を積極的に行っています。抗原検査は、インフルエンザテストと同じ要領で鼻腔咽頭ぬぐい液を採取して検査を行います。少し嫌な検査ですが、そこは少し頑張っていただいてます。結果判定は15分といわれておりますが、早い方では数秒で結果が出るほどの検査です。今シーズンは全く流行っておりませんが、インフルエンザ検査もこの1回の検査で合わせて診ることも可能です。
また、若い方で、発熱だけでなく味覚嗅覚異常も併発されている場合などは、初めからCOVID-19を疑い、抗原検査を行うことももちろんあります。それについては、個々の診察により判断となります。
では、TVでよく耳にするPCR検査はというと、この検査も当院でも行っておりますが、外部委託といって、検査後の検体を検査会社に依頼するものとなります。したがって、結果が出るまで早くて翌日の夕方、場合によっては2日後の朝となってしまいます。検査の精度的には抗原検査と差がない印象もあり、時間のかかるPCR検査より、まずは15分(または数秒)で判断のできる抗原検査を積極的に行ているわけです。ただし、抗原検査は、症状のない場合や発症後6日程度経ってくると検出しにくい傾向があり、そうした場合は結果によってはPCR検査を併用することもあります。
このような形で進めてきたなかで、その中に高齢者や持病持ちのリスクのある患者さんを診る機会もありました。
そこで、何例か経験したのが、糖尿病の方々でした。その方達は、いずれも自覚症状の訴えは強くなく、発熱(微熱程度)と若干の息苦しさまたは軽度の咳というもので、体力的には自宅で経過観察を希望されるような方達でした。診察所見も、特に肺炎を疑うような所見はなく、酸素飽和度も97%以上と特に気になるものではありませんでした。念のため行った採血で、院内で確認できる白血球数は正常範囲内でしたが、外部委託で翌日に戻ってきた検査結果の中でCRPという炎症反応を示す値が、高値を示したのです。発症後、5~7日経過した状態でCRPが5.0前後あり、最初の方はその2日後には14まで上昇していたため、すぐに総合病院を紹介し入院となり、そこで行ったCTでは肺炎像を認め、重症化の手前まで進んでいたということでした。もう一人の方も、CRPが高かったため、保健所を介して入院先を探し、入院後のCTで肺炎であったということでした。いずれの方も改善し大事に至らずということでしたが、あのまま自宅待機となっていたら、もしかすると最近話題になっている自宅で死亡などということになりかねなかったのだろうと思いました。
これらの経験から、リスクのある患者さんには積極的に採血を行い、CRPをチェックし、上昇の場合には、本人の自覚症状が軽度であっても入院措置を積極的に勧めることで重症化の患者さんを減らすということだと思いました。KL-6やD-ダイマーなど重症化の指標となる検査はありますが一般的ではなく、日常診療の中でCRPのような身近な指標でも、重症化を減らすことに役立つものと思います。今後の診療に役立てられればと思い紹介しました。
当院へ発熱で受診される場合は、一般の外来患者さんと分けて診療を行っておりますので、まず当院へ電話でご連絡ください。また、当院到着の際も玄関のドアを開ける前に電話をしていただき、別の場所での診察を誘導いたしますので、ご了承ください。