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2020.06.08更新

先週より、当院でもロシュ社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体検査を扱えるようになりました。

定量検査ということで、専用の機器で読み取りを行うため、精度は上がるものと思われます。

だた、IgG抗体のみという点が、どうしても気になります。

先週だったか、プロ野球読売巨人の坂本選手らが検査でIgG陽性ということで、その後の精査目的で行ったPCR検査が微陽性。こうなると困るのは本人達と球団関係者、またはプロ野球界全体も動揺していた印象もあり、野球ファンへの不安にもつながったのではないでしょうか。

そもそも、なぜIgGだけだったのか。巨人の集団検診の詳細(どこの検査会社だったのかなど)は知りませんが、IgGだけを行った場合、それが陽性の時に、あのような問題が出るといういい例だったのではないかと思います。また、PCR検査も、すでに死んだウイルスのRNAを感知してしまうと陽性(微陽性?)という結果が出てしまうことは以前より指摘されています。だからこそ、IgMを合わせて行う意味があると思います。もしIgMも陽性の場合は、少なくとも数週間以内の感染の可能性があるため、自覚症状がない場合は自己隔離など拡散防止策が必要と考えられ、しかるべきタイミングで再検査を受けるように勧めるようにしてます。

したがって、IgG抗体のみの検査であるロシュ社の検査では、結果によっては説明が不十分となる可能性が高いと考えます。

検査は、結果だけが重要なのではなく、結果から何が言えるかが重要だと考えてます。ですので、結果を郵送で送るようなことはできないし、また、患者さんがどのような背景で検査を受けるかを考慮したうえで、その結果を考察する必要があると思います。感染リスクがかなり低いか、すでにPCR検査が陽性でCOVID-19と診断されているなど、IgG抗体検査のみでよいという人は、ロシュ社の検査でもよいと思います。しかし、IgG陽性を想定していない場合などは、その結果をしっかり説明できる十分な材料はあった方が納得できることもあります。今後、ワクチンが製造され、そのワクチン接種後に抗体がついたかどうかの確認にはIgG抗体検査のみでも十分かもしれません。

当院で行う迅速抗体検査は、より精度を上げるために、全血ではなく遠心分離機を用いて血清より検体を抽出し検査を実施するように改良しました。

 

当院で扱う抗体検査のまとめ(現段階での私見):

ロシュ社の抗体検査;定量検査で精度は高いと考えられるが、検査IgGのみであることと、結果報告まで2~4日程度を要する。IgGが陽性の場合、IgMは不明なため、IgMの追加検査、またはPCR検査(有症状など)が必要な場合もある。

迅速抗体検査;目視での判定のため、精度が機械測定の定量検査よりは劣る可能性がある。当院では全血ではなく遠心分離後血清を検体として検査することで精度を上げる工夫を行っている。IgMとIgGを検査するため、結果の考察がよりしやすくなる。

検査費用は、迅速抗体検査の方がかかるが、ロシュ社の検査費用の設定と合わせて、今後希望者には、迅速検査とロシュ社の検査の併用などの検査費設定も行うことを検討中。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信