STAFF BLOG

2023.08.04更新

連日の暑さは、やはり異常だし堪える、おまけに夕立などのお湿りもないので、夜家に帰るとこもった暑さでさらにげんなりするものです。

今から何十年も前の学生の時も夏は暑く、夏合宿に向けた自主トレで毎日昼の12時頃折り返しを回るコースで8㎞ほど走っていましたが、その時もかなり暑かったと感覚的な記憶もあり、実際のところは気温はどうだったのだろうとネットで調べてっ見ると、意外と30℃を下回る日が多かったに驚きました。やはり平均5℃ぐらいは高いのかもしれなと…

そんな暑い夏、気を付けたいのはおなかの調子です。どうしても冷たいものを口にしやすいこの季節、キンキンに冷えた飲み物をぐいぐいを飲み続けた先に、下痢などの症状。これが続くと、様々な悪影響が体に降りかかります。下痢が続いている人の採血をすると、リンパ球が低いことが多く、それだけ腸炎とリンパ球の関係は密接というわけです。

冷たいもので腸に負担をかけ続けると、リンパ球が減り、抵抗力、つまり免疫力が低下します。それが夏風邪の間接的な原因や、夏バテの原因につながるということです。

冷たいのものの摂取を控え、この夏を乗り切りましょう!

たまに食べるアイスクリームやビールは暖かい必要はないことは言うまでもありませんが。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2022.03.31更新

オミクロン株が日本に上陸した1月からもう3カ月が経過しました。

この間、当院では抗原検査226例、PCR検査314例に施行しました。

PCR検査は必ずしも診断目的だけでなく、企業からの依頼による陰性確認も多く含まれたため、陽性者の割合は多くありませんでした。それでも、抗原検査では122例、PCRでは52例が陽性でした。診断目的の主力として考える抗原検査で陽性率は54%でまずまずと思っております。PCR検査での陽性者も、クリニックの抗原検査キットが不足した際に、やむを得ずPCR検査を行った例でのことであり、抗原検査でも十分に診断の手段になりえたと考えられました。

ところで、このオミクロン株はもう皆さんもご存じかと思いますが、咽頭を含む上気道周辺での症状が中心で重症化はしにくいが感染力は強い、まさにその通りだと思います。厄介ごとと言えば、基礎疾患を持つ方や高齢者には牙をむくかもしれないリスクがあり、まだ社会的にもいろいろな制限のかかる感染症であるということです。そして最近は、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を済まされている方も増えておりますが、接種後感染で来院される方も残念ながら少なくありません。特徴は、軽症で発熱すらしない方もいるということです。これでは、どのように感染者を診断するかとても難しくなります。したがって、診断にたどり着かず、ただの咽頭炎として投薬を受ける、または診療所にすら行かない人も少なくないはずです。まん延防止等重点措置も解除となり、こうした無症候性または軽症者が街へと繰り出すわけですから、感染者数はなかなか減らないわけです。

つまり、3回接種でもオミクロン感染は食い止められないのは間違いないと思います。では無意味かというと、重症化は防いでいるので意味はあるのでしょう。いずれにしても、3回接種したからと言って油断せず過ごすことが大事かと思います。

そして、もう一つ、最近の発熱に潜む原因が、オミクロン株だけではなく、細菌感染です。抗原検査で陰性でも採血をすると細菌感染の疑いのある白血球数が異常高値を示す患者さんが多いのです。新型コロナでなくて良かったと胸をなでおろす方もいますが、細菌感染の方が意外にしぶとく再燃を繰り返したり、未治療で発熱が長く続くケースもあり侮れません。ですので、高い熱でコロナ陰性でも、採血をしてみることも勧めます。扁桃腺が腫れあがり、白苔を認めるようなケースばかりでなく、はっきりした感染源が分かりにくい細菌性感染もあるということです。

ただでさえ、花粉症で首から上がつらい季節。敵は少なくありません。もうしばらく辛抱の季節が続きそうです。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2021.11.05更新

新型コロナウイルスの感染者が激減したことは、ワクチン接種包囲網の効果といっても過言ではありません。

しかしながら、海外では再び感染者数の増加ということも報告されており、その影響の一つがワクチン接種後の経時的な抗体価の減少にあると思われます。当院でも、定期的に抗体価をチェックしている方々の結果の中で、接種後数週間と数カ月後とで比較した際に、明らかな低下を認めています。そのことからも、新型コロナウイルスワクチンのブースター接種の必要性が言われていることはうなずけることと思います。

そこで、この抗体価の低下に歯止めをかけ、できればブーストさせる方法はないものか、3回目接種までのつなぎとなる方法はないものかと考えました。そこで着目したのが、インフルエンザワクチン接種です。昨年、新型コロナウイルス感染後に抗体価定期的に測定していた方がインフルエンザ予防接種を受けた約4週間後に抗体価を測定したところ、その数値がおおよそ2倍に増えた方がいたことを紹介しました。

http://www.roppongi-hat.com/blog/2020/11/post-25-757048.html

この経験から、ならば新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体価も、同じようにインフルエンザ予防接種によって免疫系が刺激を受けて増加するのではないかと考えました。

今年は、インフルエンザ予防接種のワクチンの入荷が遅く、数に限りがあるということもあり、このような取り組みも大々的にできるものではなく、まずは職員の協力を得て始めてみようということで、先に行った2人の結果をご報告したいと思います。

 1人目は50代男性、2人目は20代女性です。2人ともファイザー製のワクチン接種2回目を7月に終了しました。抗体価の検査は、外部委託でロシュ・ダイアグノスティックス社(ロシュ社)の検査(0.80 U/ml未満:陰性)を用いました。インフルエンザ予防接種前の抗体価の値は、それぞれ1050と314ということでその数値には個人差がありました。さらに、男性の結果は、新型コロナウイルスワクチン接種数週間後の抗体価は3850であったものが、数か月後には1050にまで低下しました。これ自体も衝撃でしたが、もちろん個人差はあります。

さて、11月に入り、インフルエンザ予防接種後4週間が経って、先日抗体検査を行いました。その結果、1人目は1050から1010、2人目は314から359ということでした。いぜれも残念ながら、ブーストする結果には至りませんでした。2人の結果では当然医学的な証明などできませんので、もし同じような検証を行う医療機関があればその論文発表を待ちたいところです。

今回のトライアルは、その後もご興味を持った方が、検査に臨んでおり、その結果は積み重なりますが、特別な研究費があるわけではないので、あくまでも興味をお持ちの方々とその結果の傾向を注視していきたいと思いました。

今後、これらの職員の抗体価は数カ月単位でフォローしたいと考えております。ブーストしないまでも、抗体価の維持につながらないかをみていきたと思います。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2021.06.14更新

緊急事態宣言と感染者数、ワクチン接種の状況、そしてオリンピック・パラリンピックの開催など、いろいろなことが絡み合っており、今後どのようになっていくのだろうと思う毎日です。

カギとなるのが、ワクチン接種と効果になると思います。効果を予測するうえで一つの指標となるだろうと考えるのが抗体価というものです。特に、このワクチン接種のターゲットになるスパイク蛋白に対する抗体がどれほど備わるかが重要と思われます。先日千葉大学が発表した医療従事者のワクチン2回接種後の抗体価は、Elecsys® Anti-SARS-CoV-2S (Roche Diagnositics, Rotkreuz, Switzerland)により定量測定したもので、当院で行う抗体検査も同様の方法での検出となり、非常によい指標になると思いました。ここでの報告では、中央値が2060.0 U/mLということでしたが、当院で新型コロナウイルス感染後の抗体価の高い方でも約1000 U/mLということですので、ワクチン接種による抗体価がいかに高いかを示す結果でもありました。どれぐらいの抗体価であれば安心なのか、変異株にはどれぐらい有効なのか、抗体価はどれぐらいもつものなのかなど、今後の研究結果を待つところもありますが、ワクチン接種が始まった現状では、こうした論文は、よい目安になるのは間違いありません。

感染後の患者さんのみならず、ワクチン接種後の抗体価検査をお勧めいたします。喫煙者や高血圧の方、高齢者、ステロイドを含む免疫抑制剤を使用している方などは抗体価が低めという報告もあります。

 

抗体価のチェックのタイミングは2回接種後2週以降、4週ぐらいが目安かと思います。

ワクチン接種をされた方は、そこで安心することなく、その後の免疫力を維持することも重要だと思います。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2021.01.20更新

今年最初のブログも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の話題となります。

昨年の3月下旬ごろより新型コロナウイルス感染症と思われる患者さんが当院を受診するようになり、当初は保健所に連絡をして検査を行うなどの対応を行っておりました。東京都の要請もあり、9月下旬には一般の患者さんとの動線を分け、別の場所での診察など一定の条件を満たしていることもあり、当院での発熱外来としての診療および検査を行えるようになりました。

冬の発熱は、新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザを含めた他のウイルスによる風邪症候群や細菌感染によるものなど様々です。

細菌感染であればターゲットに合った抗生物質を他の症状に対する薬と併用し、インフルエンザであれば抗インフルエンザ薬を用いた治療が可能となります。

その為、38℃以上の発熱の場合、まず採血を行うことを勧めています。それで白血球が高ければ、COVID-19の可能性は低く、抗生物質を投与し帰宅となります。もし、白血球が正常または低めという場合は、ウイルス感染も考えなければならなくなります。当然のことながら、現在はCOVID-19か否かを検査したくなるところです。患者さんに説明の上で、まず抗原検査を積極的に行っています。抗原検査は、インフルエンザテストと同じ要領で鼻腔咽頭ぬぐい液を採取して検査を行います。少し嫌な検査ですが、そこは少し頑張っていただいてます。結果判定は15分といわれておりますが、早い方では数秒で結果が出るほどの検査です。今シーズンは全く流行っておりませんが、インフルエンザ検査もこの1回の検査で合わせて診ることも可能です。

また、若い方で、発熱だけでなく味覚嗅覚異常も併発されている場合などは、初めからCOVID-19を疑い、抗原検査を行うことももちろんあります。それについては、個々の診察により判断となります。

では、TVでよく耳にするPCR検査はというと、この検査も当院でも行っておりますが、外部委託といって、検査後の検体を検査会社に依頼するものとなります。したがって、結果が出るまで早くて翌日の夕方、場合によっては2日後の朝となってしまいます。検査の精度的には抗原検査と差がない印象もあり、時間のかかるPCR検査より、まずは15分(または数秒)で判断のできる抗原検査を積極的に行ているわけです。ただし、抗原検査は、症状のない場合や発症後6日程度経ってくると検出しにくい傾向があり、そうした場合は結果によってはPCR検査を併用することもあります。

このような形で進めてきたなかで、その中に高齢者や持病持ちのリスクのある患者さんを診る機会もありました。

そこで、何例か経験したのが、糖尿病の方々でした。その方達は、いずれも自覚症状の訴えは強くなく、発熱(微熱程度)と若干の息苦しさまたは軽度の咳というもので、体力的には自宅で経過観察を希望されるような方達でした。診察所見も、特に肺炎を疑うような所見はなく、酸素飽和度も97%以上と特に気になるものではありませんでした。念のため行った採血で、院内で確認できる白血球数は正常範囲内でしたが、外部委託で翌日に戻ってきた検査結果の中でCRPという炎症反応を示す値が、高値を示したのです。発症後、5~7日経過した状態でCRPが5.0前後あり、最初の方はその2日後には14まで上昇していたため、すぐに総合病院を紹介し入院となり、そこで行ったCTでは肺炎像を認め、重症化の手前まで進んでいたということでした。もう一人の方も、CRPが高かったため、保健所を介して入院先を探し、入院後のCTで肺炎であったということでした。いずれの方も改善し大事に至らずということでしたが、あのまま自宅待機となっていたら、もしかすると最近話題になっている自宅で死亡などということになりかねなかったのだろうと思いました。

これらの経験から、リスクのある患者さんには積極的に採血を行い、CRPをチェックし、上昇の場合には、本人の自覚症状が軽度であっても入院措置を積極的に勧めることで重症化の患者さんを減らすということだと思いました。KL-6やD-ダイマーなど重症化の指標となる検査はありますが一般的ではなく、日常診療の中でCRPのような身近な指標でも、重症化を減らすことに役立つものと思います。今後の診療に役立てられればと思い紹介しました。

当院へ発熱で受診される場合は、一般の外来患者さんと分けて診療を行っておりますので、まず当院へ電話でご連絡ください。また、当院到着の際も玄関のドアを開ける前に電話をしていただき、別の場所での診察を誘導いたしますので、ご了承ください。

 

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2020.11.08更新

11月に入り、インフルエンザ予防接種の接種者数も増えてますが、今年のインフルエンザは果たして流行るのか?

そして、新型コロナウイルス感染とインフルエンザ感染をどのように診分けていくのか?

これまでのインフルエンザ感染の今年の各国の状況は、流行るはずの時期に流行っていないのが現状のようです。

国をまたいだ人の行き来が極端に少なくなってることと、新型コロナウイルスの流行でみんなが予防を行っていることで、インフルエンザも間接的に抑え込まれていることなどが要因と考えられます。

とはいえ、乾燥して気温が下がれば、ウイルスがアクティブとなりやすい環境となるため、油断はできませんね。

特に、今年の冬は寒い予想が出ており、寒さで免疫力が下がれば、インフルエンザにも、新型コロナにもかかりやすくなります。

当院でも、どのように発熱患者さんを診ていくのか、一般の患者さんと分けて診れるように工夫しながら、診療を行っています。

インフルエンザと新型コロナウイルスの抗原検査を同時にすることで、見分けを付けることも行っています。

しかしながら、発熱のタイミングと診察のタイミングにあまり時間的な差がない場合(発熱して間もない)は、十分な結果を得られないこともあるため、その判断は都度行っていかねばなりません。

そうした課題がある中で、インフルエンザ予防接種と新型コロナウイルス感染予防の関連はどうかという点を考えたいと思います。

10月中旬に、宮坂先生の講演に参加しましたが、その際、「自然免疫と感染予防」というトピックがあり、いかに自分の持ち合わせた免疫力が予防に重要な役割を果たすかを再認識しました。

その際、宮坂先生に質問したことが、インフルエンザ予防接種と新型コロナウイルスの予防効果という点ですが、自然免疫の観点からは、十分予防効果があると考えられるということでした。

そして、先週それを裏付ける出来事がありました。

当院にかかりつけの患者さん、この方は、7月中旬に新型コロナウイルスに感染してしまい、回復後、約1か月ごとに新型コロナウイルスの抗体検査(ロシュ社)を行っていたのです。

始め9月の検査では90台の抗体価であったのが、10月には70台に下がりました。やはり、抗体価が下がるということで、このまま続くと、また再感染の可能性があるかもしれないことを、その患者さんには伝えていました。そして、その1か月後、今月に再度抗体価をチェックすると、140台に跳ね上がっていたのです。てっきり、再感染をしたのかの思い、そのことをこの方に尋ねると、「そんな事はないと思います」とのこと。(疑ってすみませんと反省ehe

そしてその方が、「インフルエンザ予防接種との関連はありますかね~」というのです。

カルテで再確認すると、ちょうど4週間前にインフルエンザの予防接種を行っていたのです。

「これだ~!」謎が解けました。

再感染ではなく、予防接種により、免疫力が刺激を受けて、抗体価を押し上げたのだと思います。

いつも患者さんには、「インフルエンザ予防接種を受けた後、4週間後には6割ぐらいの方に抗体ができます。」と説明をしていることが、まさに証明されたのだと思いました。

インフルエンザと新型コロナということでウイルスは違えど、自然免疫を賦活することには十分に役立っているということが考えられます。

まだ、副作用のわからない新型コロナウイルスのワクチンを待つより、インフルエンザ予防接種を受けることで、備えをすることの方がより現実的だと感じた経験でしたのでご報告します。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2020.07.27更新

例年なら、梅雨明けして、セミの鳴き声と真夏の日差しが照り付けるころ、そして本来であるならば、オリンピックで都内は賑わい、テレビでも連日オリンピックのメダルラッシュを伝えているはず。

しかし、新型コロナウイルス感染のせいで、夏の高気圧すら来るのをためらっているかのうような状態。

そのような湿った毎日が続く中、前回膀胱癌に対する全身温熱療法(HAT)の成果に続き、今回は肝細胞癌に対する自家がんワクチン療法の紹介です。この患者さんは、肝炎ウイルスによる肝炎から肝細胞癌を発症し、その後肺転移、そして仙骨への転移もあり、当院にて自家がんワクチンによる免疫療法を行うことになりました。これまでの治療は、総合病院にて肝細胞癌に対する手術、またその後の肺転移に対する手術をそれぞれ行い、その後化学療法も行ってましたが、副作用もあり化学療法は中断し、また仙骨転移に対して、放射線療法を5回仙骨に対して行ったということでした。その間、腫瘍マーカーであるアルファーフェトプロテイン(AFT)が、じりじりと上昇し、放射線治療中の採血では1400以上であったものが、その3週間後の放射線療法後に始めた自家がんワクチンにより500にまで減少したのです。もちろん放射線療法の治療効果もあるものと思いますが、これだけ早い段階での成果に患者さんも励みになっているようでした。先日2回目の接種も終わり、3回接種で一区切りとなりますが、副反応もほとんどなく、日常生活に支障がないことがこの治療の良い点でもあるかと思います。

この治療は、固形癌の手術後、その癌腫瘍の一部からワクチンを作るという方法で、この不活化した癌細胞の情報を自分の免疫系に覚えさせ、残る癌細胞を攻撃するというイメージのものです。他の免疫療法と違い、何がターゲットとなるかを自分の免疫系に明確に示せるため、特異的であるという点と、副反応、副作用が少ないことも患者さんの負担をとるために有用であると思います。また、治療費も通常の免疫療法の半額程度で、治療は通院で行える、ことなど多くの利点があります。

この治療は、癌腫瘍の検体2グラム以上が必要となるため、手術後であることが条件の一つとなります。したがって、白血病など非固形癌や未手術の症例では適応がありません。どの病院で手術した場合であっても、主治医の先生に癌腫瘍の一部をいただくことで、当院でこの治療を受けることは可能となります。肝細胞癌や脳腫瘍などで多くの実績のある治療ですが、その他の癌に対しても成果が期待できると思います。多くの患者さんに受けていただきたい治療の一つです。

自家がんワクチン接種後2週間

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2020.07.12更新

60歳代男性の膀胱癌Stage 4、骨盤内リンパ節転移に対して全身温熱療法(*HAT)を開始しました。

これまで、内視鏡手術と化学療法(1クールのみ)、さらに骨盤内リンパ節転移に対して放射線療法を10回行ったということでした。

現在は、緩和ケアによる治療となっておりますが、実際にはサプリメントによる治療のみということでした。

 

来院時は、しばらく続く食欲低下と体重減少、疼痛による歩行困難のために車いすでの生活を強いられた状態でした。

本来であれば、この全身温熱療法(HAT)は、体力を使うため、独歩で来院できる程度の体力のある方に対する治療を原則としていますが、この患者さんの場合は、体力の衰弱ではなく、疼痛による歩行障害ということで、車いすではありましたが治療に進むことにしました。

まずは適応検査で、体の反応をチェックし、治療による効果が期待できそうか、また本人が治療の継続を希望できるかを診ることとしました。当面の治療目的としては、HATによる体力増進、疼痛コントロールと免疫賦活としました。

 

1回目の適応検査の際にとてもいい感触を得ることができました。はじめはまだ体が慣れていないせいか、体温の上りも緩やかであったものが、徐々に加速がつき始め、5分間の体温上昇を示す昇温速度も、途中0.34(℃/5分)までとなりました。これはかなりいいペースです。さらに、治療を始める前のリンパ球数は930/μLでかなり低めであったのが、目標温(スター時の直腸温から+2.0℃)到達時には、1500/μLとなり、循環血液量の変化等を補正したリンパ球数でみると、一過性ではありますが、19億6500万個のリンパ球の増加となり、補正後のリンパ球増加率は54.91%でした。このリンパ球の増加率は、2回目は69.22%、本施術に進んだ3回目は、89.85%と、回を増すごとに反応が良い状態となっています。また、この3回目には、治療開始前のリンパ球数がすでに1560/μLと1回目のHATの目標温到達時のリンパ球数を上回っていたのです。目標温到達時のリンパ球数は一時的な上昇ではありますが、HATを繰り返し行うことで体質が変わり、循環と代謝改善により、容易にリンパ球が増えやすくなる、すなわち免疫賦活状態になりやすい体に変わるということになります。さらに、適応検査開始時の白血球数は、7950と高値であったものが、3回目にはすでに5650となり、炎症を示唆した好中球の増加が、3回目には半数の正常範囲となったことによるものでした。慢性期の炎症に対しても何らかの好反応を示したことになると考えられます。下に示す血液は、右側が目標温に到達した際の血液で、左側の血液が治療前の血液ですが、右の方が真赤な鮮血であるのがわかります。これは、HATにより循環流速の増した血液が動脈からシャントを介して静脈血に循環していることによるもので、静脈血でありながら、酸素分圧が高い、まるで動脈血と同じような血液となっているのです。患者さんだけでなく、これを目の当たりにした当院の新しいスタッフは、「これはすごい!」とかなり驚いておりました。

 

また、この患者さんは、1回目以降食欲が出るようになり、体重も増えたと喜んでいました。これは、腸内環境の改善につながっており、腸内に存在するリンパ球を活発にし血液中に送り込む要因になっているものと考えられます。

その後、昇温速度も回を重ねるごとに早くなり、何より患者さんの意欲が増して、笑顔が増えたことも治療を進めていてよかったと思う点でもあります。

これからも頑張って治療を進めいい成果が出ることを期待したいと思います。

 

*HAT:Hyperthermia Aqua Therapy 温水を用いた全身温熱療法

 

 HAT前後の静脈血採血

 

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2020.06.08更新

先週より、当院でもロシュ社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体検査を扱えるようになりました。

定量検査ということで、専用の機器で読み取りを行うため、精度は上がるものと思われます。

だた、IgG抗体のみという点が、どうしても気になります。

先週だったか、プロ野球読売巨人の坂本選手らが検査でIgG陽性ということで、その後の精査目的で行ったPCR検査が微陽性。こうなると困るのは本人達と球団関係者、またはプロ野球界全体も動揺していた印象もあり、野球ファンへの不安にもつながったのではないでしょうか。

そもそも、なぜIgGだけだったのか。巨人の集団検診の詳細(どこの検査会社だったのかなど)は知りませんが、IgGだけを行った場合、それが陽性の時に、あのような問題が出るといういい例だったのではないかと思います。また、PCR検査も、すでに死んだウイルスのRNAを感知してしまうと陽性(微陽性?)という結果が出てしまうことは以前より指摘されています。だからこそ、IgMを合わせて行う意味があると思います。もしIgMも陽性の場合は、少なくとも数週間以内の感染の可能性があるため、自覚症状がない場合は自己隔離など拡散防止策が必要と考えられ、しかるべきタイミングで再検査を受けるように勧めるようにしてます。

したがって、IgG抗体のみの検査であるロシュ社の検査では、結果によっては説明が不十分となる可能性が高いと考えます。

検査は、結果だけが重要なのではなく、結果から何が言えるかが重要だと考えてます。ですので、結果を郵送で送るようなことはできないし、また、患者さんがどのような背景で検査を受けるかを考慮したうえで、その結果を考察する必要があると思います。感染リスクがかなり低いか、すでにPCR検査が陽性でCOVID-19と診断されているなど、IgG抗体検査のみでよいという人は、ロシュ社の検査でもよいと思います。しかし、IgG陽性を想定していない場合などは、その結果をしっかり説明できる十分な材料はあった方が納得できることもあります。今後、ワクチンが製造され、そのワクチン接種後に抗体がついたかどうかの確認にはIgG抗体検査のみでも十分かもしれません。

当院で行う迅速抗体検査は、より精度を上げるために、全血ではなく遠心分離機を用いて血清より検体を抽出し検査を実施するように改良しました。

 

当院で扱う抗体検査のまとめ(現段階での私見):

ロシュ社の抗体検査;定量検査で精度は高いと考えられるが、検査IgGのみであることと、結果報告まで2~4日程度を要する。IgGが陽性の場合、IgMは不明なため、IgMの追加検査、またはPCR検査(有症状など)が必要な場合もある。

迅速抗体検査;目視での判定のため、精度が機械測定の定量検査よりは劣る可能性がある。当院では全血ではなく遠心分離後血清を検体として検査することで精度を上げる工夫を行っている。IgMとIgGを検査するため、結果の考察がよりしやすくなる。

検査費用は、迅速抗体検査の方がかかるが、ロシュ社の検査費用の設定と合わせて、今後希望者には、迅速検査とロシュ社の検査の併用などの検査費設定も行うことを検討中。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

2020.06.01更新

先週より、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体検査を始めました。

この検査は、鼻腔咽頭粘膜のぬぐい等によるPCR検査とは異なり、指先の針刺しによるわずかな採血により検査するものです。定期的な採血検査と併せて行う方やにんにく注射の際に先に採血を行って検査される方もおりました。好奇心や仕事柄調べておきたいという方、あの時の症状が感染だったかを知りたいという方など様々でした。

この時期に、自分の状態を抗体検査で把握することは、安心なのか、引き締めなのか、反応は様々ですが、また来るであろう次の波にどう向かっていくか、備えていくか等の参考になることも多いように思います。仮に,現在発表されている感染者数の10倍が実際の感染者数だとしても、人口の約0.15%で、1,000人検査して1.5人が陽性となる計算です。実際に10倍なのか20倍なのかすらわかりません。だからこそこうした検査はその指標になりうると思います。もちろん、当院で希望されて検査を受ける方は無作為ではないので、一般の疫学調査には利用できませんが、六本木周辺というエリアだったり、「あの時感染したかも」っと心当たりのある人という背景を加味することで、何らかの傾向がみられると医学的には有用なのかと考えます。

まだまだ少数ではありますが、ここまでの検査結果をみると、「やはり日本人は感染しにくいのかも・・・」っとおもいたくなるような印象もあります。

まずは、検査を積み重ねていきたいと思います。

投稿者: 六本木HATクリニック 院長 福田智信

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